選択のパラドックス

バリー・シュワルツ博士

TEDグローバル(2005年7月) 19分40秒



ポジティブ心理学発祥の地ともいえる米・ペンシルベニア大学近くにある名門女子大スワスモア大学の社会心理学の教授であるバリー・シュワルツ博士は、世の中の常識だと思われることを覆すかのような研究で有名です。その研究とは著書のタイトルでもある「選択のパラドックス」。


シュワルツ
 


選択が多ければその分自由度は増し、 自由度が増せばその分繁栄する。これが先進国を始めとした発展系の考え方でした。ところがあまりにも増えた選択肢は、人々の満足度を低下させ、ときに人を不幸にすることもあるとシュワルツ博士は考えます。先進国でうつ病や自殺が爆発的に増えたその要因の大部分に、選択肢が豊富になりすぎて人々の期待値が増大し、その結果選択した経験が不満足なものになってしまっている点に起因していると伝えます。

 


現代社会は、モノとサービスで溢れています。とくにアメリカではその傾向が強い。このTEDトークでも例として挙げられた様に、スーパーにいけば数々のドレッシングが並び、オーディオショップには複数のAV機器が陳列され、消費者としての私たちが何を選べば良いのか迷わせます。医者にかかれば処方箋の薬の選択を迫られ、財産形成のために無数の投資信託から選ぶ事は避けたくなるほど厄介に感じられ、将来の計画として結婚・子供・キャリアなどの選択が必要になる。豊富で複雑な選択肢は、私たちを自由にするのではなく、無力さを感じさせてしまう。



シュワルツ
シュワルツ博士の著書「なぜ選ぶたびに後悔するのか」では、自由と満足をもたらすはずの豊富な選択肢が、実は私たちに「間違った選択をしてはならない」というプレッシャーを与え、開放感ではなく無力感を生み、期待値を上げるがゆえに実際の経験と期待のギャップを生み満足度を下げる、といった逆説的な現象が起きていると伝えます。

 
ではどうすればよいのか。シュワルツ博士は「選択肢を減らす」という提案をします(この著書には、そのための11のステップが記されています)。それがストレス・不安・多忙を低減し、人生やキャリアで本当に大切なことだけにフォーカスすることを可能にする。
 
そして幸福の秘密とは「期待値を低くもつ」ことにあると伝えます。そうすれば足る事を知り、満たされる。非常に実用的な心の持ち方だと考えられます。


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バリー・シュワルツ博士

シュワルツ
先進国での選択の豊富さは、私たちを無力にする「選択のパラドックス」とは?

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