チクセントミハイ博士の「フロー」

TED会議(2004年2月)18分59秒

ミハイ・チクセントミハイ博士は、マーティン・セリグマン教授とともにポジティブ心理学を創始した一人です。ハンガリー出身のチクセントミハイ博士は、戦後混乱した社会に直面し、「生きる事とは何か」「幸せとは何か」を自ら問いかけるようになったと言います。そこで答えを求めたのが心理学でした。若い頃に偶然話を聞く機会をもてた、ある有名な心理学者との出会いに影響を受けていると語っています(その人物が誰であったかは、ビデオをご覧下さい)
 

 
その後、心理学を学ぶために米国に移住した博士は、名門シカゴ大学で心理学の博士号を取得し、そのまま研究室に残ります。そこでも「人生を生きるに値するものにするものは何か」を問い続けます。収入が増えることでは、または物質的な充足だけでは、幸福感が増すことがない。この事実に気付いた博士は、幸せの源泉を他に求めました。
 
博士は自問します。毎日の生活の中で、いつどんなときに幸せを感じるのか。そこで博士は創造性の高い人々にインタビューをすることを思いつきます。彼ら彼女らに共通するものは何か。芸術家や音楽家、科学者やスポーツ選手が何をもってその人生を費やすに値すると感じるのか。たとえ名声や金銭の見返りがなかったとしても...。
 

創造的な活動や高い技術力を必要とする仕事などに没頭しているとき、人々は疲れをしらず、時間の過ぎるのも忘れ、活力と喜びと永続的な満足を体験することがある。千人を超える人々にインタビューをする中で、この共通した創造的な心理状態を見いだします。それを博士は「フロー」と名付けました。このフロー理論は、後に経営や組織開発の分野でも活用されることになります。

 
博士はシカゴ大学を退官後、カリフォルニア州のクレアモント大学院大学に招かれ、世界で初めてのポジティブ心理学の博士課程を設立します。同時に同大学院内のQLRC研究所で創造性・楽観性・責任などの研究を続け、その熱意は衰えを見せません。また、ハーバード大学のハワード・ガードナー博士らと卓越性と倫理観を同時に満たす経営者のあり方を研究した「グッドワーク」プロジェクトも有名です。

 
ハンガリー訛り(?)がある博士の語り部は、ゆっくりではありますが多少聞き取りづらいところがあります。ところが当ビデオには日本人ボランティアの方が作成した字幕があり、大変助かります。字幕つきで良質な内容のビデオを無料で閲覧出来るこの恵みに、TEDの関係者には感謝を感じます。
 
フロー研究は日本人とも親和性が高いポジティブ心理学の一分野であると考えられます。その理由は、博士のもとで学ばれた日本人研究者の方々が良質な翻訳書を初めとして本質的な教育をされていること、企業組織で応用されやすいこと、そしてこの理論が日本人の精神性や武士道の考え方と通じるものがあること、などが考えられます。
 
ぜひこのビデオをきっかけにして、関連書を読む、またはフロー理論を学ぶ事ができるセミナーや講義に参加するなどして理解を深めて頂ければと思います。

 

ポジティブ心理学を学ぶ「TEDトーク」7選

マーティン・セリグマン教授

セリグマン
ポジティブ心理学の創始者の一人であるセリグマン教授が語る「ポジティブ心理学」

ミハイ・チクセントミハイ教授

没我・没頭、しかも卓越性がもたらされる「フロー」の研究の第一人者が語ります

ダニエル・カーネマン博士

カーネマン
心理学者でありながらノーベル経済学賞を受賞した「行動経済学」の創始者が語る「経験と記憶の謎」

ダニエル・ギルバート博士

「感情予測」の研究で有名なハーバード大学教授が伝える「私たちが幸福を感じる理由」

ポール・ブルーム博士

ブルーム
米国の名門イェール大学教授が伝える「喜びの源泉」とは?

 

バリー・シュワルツ博士

シュワルツ
先進国での選択の豊富さは、私たちを無力にする「選択のパラドックス」とは?

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ショーン・エイカー

エイカー
「幸福優位7つの法則」の著者が語る、幸福と成功の意外な関係性とは?