ポジティブ教育とは?
ポジティブ心理学の学校教育への応用
ポジティブ教育とは?
ポジティブ心理学の応用は、近年学校教育の現場において広まっています。
現在の教育機関は、学力を上げることだけでなく、心身の健全な育成や立派な社会人として世に出るために必要なライフスキルを早期に身につけることが求められているからでしょう。さらには、思春期以降の生徒達が抱える問題としてのうつ病などのメンタルヘルスの課題に対処することも期待されています。
「ポジティブ教育」では、ポジティブ心理学のコア研究である「ウェルビーイングの向上」「青少年の強みとしての徳性の育成」「再起力と楽観性の教育」を中心として教育することで、学業成績偏重になりがちな学校教育に新たなバランスをとることを目的としています。
ポジティブ教育の便益
過去の学校現場での研究から、ポジティブ教育の導入には以下のメリットがあることがわかっています。
- ウェルビーイング(幸福度)の増加
- 学校での成績の向上
- 学校での適応能力の向上
- うつの低下とメンタルヘルスの向上
- ストレスや心的障害に対しての対処力の強化
この成果は、以下にあげるオーストラリア東海岸の裕福な家庭出身の子女が通う名門ボーディングスクールである「ジーロン グラマー スクール」における実例でも確かめられています。
ジーロン グラマー スクールにおけるポジティブ教育の例
ジーロン グラマー スクールは、オックスフォード大やケンブリッジ大などの世界のトップ大学に卒業生を輩出する名門進学校として有名でしたが、生徒の両親の高い期待に応え、最高の教育を提供するために「成績向上以外の何か」を必要としていました。
そこでジーロン グラマー スクールの理事らは「ポジティブ心理学」に注目し、米・ペンシルベニア大学のマーティン・セリグマン教授と彼の研究所チームを招いて、独自のポジティブ教育を開発する一大プロジェクトを実施しました。それは、初等科から高等科までのカリキュラムを含む包括的なものでした。
ポジティブ教育は生徒達のポジティブな感情や徳性などを養うことに焦点をあてています。ポジティブ心理学者の20年以上に及ぶ調査において、その新しい教育カリキュラムの導入が創造力を上げ、クリティカルな思考を増し、うつの徴候を抑え、生徒の不安障害を解消し、困難や逆境に対しての再起力を養うことが可能なことはわかっていました。
まず手始めとしてジーロン グラマー スクールで働く160人以上の教員がポジティブ心理学の理論と実践法を学習する集中研修に参加。その後、教員はポジティブ心理学の応用を自分の受け持つクラスやスポーツ活動において活用しています。
ジーロン グラマー スクールにおけるポジティブ教育は1)ポジティブな感情の経験を増やし、2)生徒に自分の強みを本人の学校生活と地域での課外活動で活かすことを励まし、3)将来の人生目的を見いだし、地域社会に意味ある違いを生み出すために有意義に生きることを奨励することを目的としています。
初等科から高等科までの生徒達は、以下の7つのテーマを網羅する教養科目を学習することになります。
- 感情
- 感謝
- 強み
- 創造性
- 自己効力感
- 再起力
- マインドフルネス
さらにより専門科目として「レジリエンス」が、思春期の生徒が直面しがちな問題を乗り越えるための再起力を培うために行われます。
- 説明スタイル
- 思考の罠
- 深層にある思い込みを知る
- 思い込みに挑戦する
- 見解を拡げる
- 即戦再起力
ジーロン グラマー スクールでは、2011年までに900人以上の生徒がポジティブ教育のカリキュラムを終えました。そして現在では、ポジティブ教育を行う名門校として、当校のブランド形成と他校との差別化につながっています。