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吉崎奈緒子さん

(メリルハースト カンパニー リミテッド 子供服販売企画担当)


「受講生インタビュー」第五回は、吉崎奈緒子さんです。取材は、丸の内の教室で「ポジティブ心理学コーチング課程」上級コースの講義の時間前に行われました。

━━━吉崎さん、今日はわざわざ早くから取材のためにお越しいただき、ありがとうございました。今日は、吉崎さんがなぜポジティブ心理学に興味をもたれたのか、そして今後ポジティブ心理学をどう活かしていこうと考えておられるのかについて、お聞きできたらと思います。

  • はい、わかりました。お役に立てるかどうか、わかりませんが...。

━━━よろしくお願いします。

  • images.jpegクリックでHPに移動私はもともとアメリカの大学院で発達心理学を勉強していました。コロンビア大学のティーチャーズカレッジという教育大学院ですが、そこでピアジェの発達理論とか、臨床心理学的なものも学びました。ただ、子供の教育というよりは、人間発達的な分野に興味をもっていました。

━━━なるほど。その後に、以前の講義の自己紹介でもお話されていたカウンセリングのお仕事もするようになったのですか?

  • そうですね。カウンセリングといっても、成人以上の若者の就職支援を行っていたのですが、そのときに就職以前に心の悩みなどが多くあり、それを乗り越えられないがためにいろいろなことができなくなり苦しんでいる人がいることを知りました。彼らは一回負のスパイラルに入ると、どんどん悪い方向に考えてしまいがちでした。認知行動療法でも、「認知の歪み」といった考え方があるのですが、彼らにその話をしても頭ではわかるのですが、なかなか生活の改善にいたることができなかったのです。
  • 「歪み」のクセがわかっても、自分自身、なかなか直せないことがあるので、よくわかるのですが、ではどうすれば若者達の力になれるのか、ということが、自分の中でひっかかりとしてありました。そんな中で、セリグマンの言っていることに非常に興味を持ちました。

━━━セリグマンですか。

  • セリグマンは、鬱病の権威ですが、子供の教育向けの本(「つよい子を育てるこころのワクチン」)を書かれていますよね。子どものうちからものごとを楽観的にとらえる訓練を受けることで、将来の様々な困難やストレスを乗り越えるための心の強さを身につけることが可能である、という彼の考えにはとても共感したのです。
  • そして2000年にAPA(全米心理学会)の会長に就任して、「私たちの仕事は心理的にマイナスの人達を治すだけでなく、今まで軽視されてきたゼロからプラスになる人、そしてプラスの人をさらにプラスにすることも重要だ」というようなことをおっしゃっていましたよね。それを後から聞いて「そう、その通り!」と思いました。

━━━ええ、そうですね。

  • マイナスの状態にある人を治すことはすごく大事だと思いますが、普通に生きている人にももっと幸せに生きたいと思っている人は多いと思います。そういったことをこれから研究し広めていきたいというセリグマンの言葉がすごく響いたのです。とくに、それまでの経験から、大人になってからでは遅いこともあるので、子供のうちから本人の得意なことを発見して伸ばすとか、セリグマンの言う様な考えが広まれば、変わるのではないかと期待しました。

━━━素晴らしいですね。

  • もう一つ興味があることが、ポジティブ感情についてです。たとえばネガティブな感情は自己を守り遺伝子を残すために生物学的には必要だと言われていますが、フレデリクソンが「ポジティブな感情も生物学的には裏付けがある」と書いていたものを目にした時に、「これが知りたかったことだ」と思いました。
  • 世の中にはいろいろ難しいことやつらいこともありますが、人間というのは幸せに充実して生きる力がもともと備わっていると思います。ただ「前向きに生きましょう」といった表面的なことだけではなく、人間の底力を発揮してくれるポジティブな感情などにもっと意識を当てることで、日本人はもっと幸せになれるのではないかと考えることもあります。

━━━たしかにポジティブ心理学者で感情研究の第一人者のフレデリクソンは「ポジティブ感情は人間の発達に寄与している」という説を発表していますが、より深い考え方ですね。

  • 一般的にも「ものは考えよう」のようなことがよく言われますが、それだけではないような気がします。そんなときにフレデリクソンの言葉に出会って、非常に共感しました。
  • 教育の世界でも「人との関係を良くするため」とか「コミュニケーションを改善するため」としてさまざまな手法が使われていますが、子供の発達を考えた場合、ポジティブ感情のようなもっと根源的な何かを素直に出したときに、脳の発達が自然にすすむような気がしています。そういったことが子供の頃から教えられていたら、子供達が大人になってからもっと力強く、幸福感を持って生きていけるのではないかと考えます。

━━━そうですね。「喜び」や「楽しみ」、「感謝」や「遊び心」のようなポジティブな感情は、一度体験すると再び味わいたいという「内発的な動機付け」になり、それが子供の能力の発達を促す原動力になることがありますが、そういった機会に現代の子供達は欠けているのかもしれませんね。

  • 子供達はやることが多すぎて、忙しいですからね。私たち親としても、選択肢がありすぎて、子供を幸せにするために何に優先順位をつければいいのか、わからないと当惑している方も多いのではないかと感じます。

━━━「選択の逆説(Paradox of Choice)」ですね。

  • そうです。私の娘も思春期でたくさんの悩みを抱えていますし、進学に関しても選択肢がいろいろあるために決められずに困っていることもあります。とくにニュージーランドに今留学しているので、英語系の大学も含めて考えるとさらに選択肢が増えて、悩んでしまいますね。

━━━私も子供の教育に関して、同じようなことを経験しました。以前働いていた外資系の会社を辞めた後に、「そのままシンガポールに残る」と「東京で他の外資系企業で働く」という二つの選択肢があったのですが、シンガポールにしばらく残ることに決めた理由が子供の学校でした。東京では学校の選択肢がありすぎてわからない。決められない状態でいたのですが、友人の薦めもあったインターナショナルスクールに運良く子供達が合格できたので、そこに通わせることに決めてほっとしたことがあります。

  • 子供の学校は、決めるときだけじゃないですね。入学した後も、子供が満足しているか、あの決定は正しかったのか、と選択肢が多いとより迷ってしまいます。

━━━では、最後に、ポジティブ心理学を今後どのように活かすことができるか、といったお考えはありますか?

  • 今の仕事とは直接関係はありませんが、私はポジティブ心理学を子供に教えることに興味があるので、セリグマンやボニウェル博士の開発した教育プログラムもどういったものか関心があります。ただ、教育プログラムは国民性に合わせることが大事なので、セリグマンのものはアメリカ人、ボニウェル博士のものは英国人にとって良いものだと思いますが、やはり日本人に合ったものが必要だと思います。コロンビア大学の場合はニューヨークにあるので、貧困層の子供達にどう教えるのかといったプログラムが開発され、私も参加したことがありました。
  • ひとつ思うのが、親の影響も大きいと思うのですが、やはり長い時間いる学校という環境の影響も大きいと思います。
  • いま、いじめの問題などの議論が再燃していますが、ポジティブ心理学の内容を子供達が学校という場でしっかり学び、また、子供を学校に通わせている大人たちも、それをきっかけにポジティブ心理学のエッセンスを学ぶことができれば、子供の成長の助けとなるだけでなく、世の中全体にその考え方が浸透する一助になるのではと期待します。

━━━たしかに、学校が起点となれば、ポジティブ心理学を活かした子育ても、そこから広がるかもしれませんね。

  • そうです。そして先生も理解していることが重要だと思います。ただ、個人的に本を読む機会があっても、先生もわからないことが多いと思います。日本は少子化ですが、だからこそ教育に力を入れていかなくてはいけない、教育がしっかりしていれば自分がどうすれば幸せに生きていけるのかを考える力を養えると思います。
  • 学校で教えてもらったからすぐにわかるものではないとは思いますが、大人になってから「どうすれば幸せになれるのか」と考えても、わからないことが多いと思います。学校は子供が大人になる土台のところを養う役割をもっていますが、いろいろある中にポジティブ心理学があるような気がします。ただ、そのことはほとんどの人がまだ気づいていないでしょうね。要素は学校でも教えていていますが、まだ浸透していないと感じます。

━━━そうですね、ポジティブ教育のように体系的には教えられていないでしょうね。

  • 学校でも教えられる様になれば、日本人の幸福度も上がるような気がします。

━━━一世代かかるかもしれませんね(笑)

  • でも、一世代かけてでも、やる価値はあると思います。

━━━(幸福度ランキングで上位常連の)北欧諸国は一世代かけて今の状態を築きましたからね。

  • 百年後に、日本人それぞれが、自分自身の幸せのあり方をしっかりもって、そのように暮らす展望をもてるような国になっているとよいと思います。まあ、その頃にはいないと思いますが(笑)ただ、今は自分のために何かしたいというよりは、次の世代に何を残していけるのかといったことを考える様になったので、これから良い方向に向かっているといった実感があることが自分の幸せで、その結果が見られなくても、それに関わっていることができればいいと考えます。

━━━本当にそう思います。今日は良いお話を聞かせていただいてありがとうございました。