「心理的資本とは」解説:HEROモデルで人的資本を構築する!
「心理的資本とは」とは、従業員の心理的な強さを表す人的資本です。本記事では、心理的資本の重要性や効果、さらに「HERO」と呼ばれる四つの要素である希望、自己効力感、レジリエンス、楽観性とは何か、HEROを高める方法などをわかりやすく解説します。
職場での心理的資本の重要性や、HEROを高めることで生産性やモチベーションの向上などの効果も紹介します。是非本記事を読んで、心理的資本の概念を理解し、職場や人生に活かしてください。
心理的資本とは何か
心理的資本とは、人々が課題やストレスを乗り越え、成功するために必要な内面のリソースや強みのことを指します。例えば、将来に対する前向きな期待、障害にもかかわらず目標を達成できるという信念、目標達成の自信、そして困難な状況から立ち上がるための力などが含まれます。心理的資本は、企業の業績や従業員のエンゲージメントやウェルビーイングを高めるための人的資本とされています。
心理的資本の提唱者は、米国のネブラスカ大学のフレッド・ルーサンス教授らです。英語の「Psychological Capital」を略した「PsyCap」と呼ばれるこの概念は、21世紀初頭にマーティン・セリグマン教授らによって始められた「ポジティブ心理学」の流れに影響を受けています。ルーサンズ教授らは、ポジティブ心理学の組織版的な「ポジティブな組織行動」(POB)というポジティブ志向の人材の強みと心理的能力の研究を行いましたが、その研究から生まれたのが心理的資本です。心理的資本は、人的資本の競争優位の源泉となります。
心理的資本の高い人材の特徴である「HERO」とは?
心理的資本は、個人のポジティブな心理的発達状態から構成されています。これらの心理的資源は「HEROモデル」と呼ばれる4つの要素で表現されています。具体的には、希望(Hope)、自己効力感(Efficacy)、レジリエンス(Resilience)、楽観性(Optimism)の4つです。
希望は、目標達成のための意志力と方法力を見出す動機づけであり、ポジティブな感情につながります。
自己効力感は、困難な課題に挑戦し成功する自信があるかどうかに関する信念です。
レジリエンスは、逆境から立ち直り、ネガティブな出来事を乗り越えて強く成長する能力です。
楽観性は、現在および将来の成功に肯定的な帰属をすることを意味します。
これらの要素は、心理的資本を構成し、私たちを成功に導くための大切な要素となっています。
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心理的資本の高い人材を育成するメリット
心理的資本の高い人材の育成は、多くのメリットをもたらします。
心理的資本を持つ人材は、仕事の成果や組織へのコミットメントが高いことがわかっています。企業としては、研修や人材育成の機会を提供し、コーチングやメンタリングを行い、成長と学習を支援する職場環境を整えることで、従業員の心理的資本を育成することができます。
多くの研究により、特にサービス業において高いレベルの心理的資本を持つ従業員は、パフォーマンスや仕事への満足度が高いことが確認されています。さらに、仕事と人生の満足度は密接に関連しているため、心理的資本を持つ従業員は一般的に人生全体においてより充実していると考えることができます。
高いレベルの心理的資本を持つことは、ウェルビーイングやBMI、コレステロール値の低下などの健康面にもポジティブな影響を与えることが分かっています。
以上のように、心理的資本の高い人材の育成は、個人・チームともに多くのメリットをもたらすことができます。
心理的資本の高い人材の育成の方法
研究によると、心理的資本の高い人材は研修などによって育成することが可能であることがわかっています。
希望
希望を育むためには、以下の3つの要素を充実させることが重要です。
目標設定と経路思考
目標設定とは、具体的で測定可能で達成可能な目標を設定し、その目標に向かって進むことです。目標を達成するためのプロセスを経路思考といいます。研修では、従業員にとって理解しやすい目標を設定し、目標達成に向けたプロセスを分かりやすく伝えることで、従業員の希望を育むことができます。また、目標達成のための小さなマイルストーンを設定し、その達成を評価することで、従業員のモチベーションを高めることができます。
動機づけ
従業員が内発的な動機づけを持つことが、希望を育むためには非常に重要です。従業員が自らの目標を設定し、その達成に向けて自主的に取り組むことができるよう、従業員に対してサポートすることが求められます。従業員が自分自身の目標に向かって進むために必要なスキルや資源を提供し、自己決定力を強化することで、従業員の自律性や意味を高めることができます。
エージェンシー思考
エージェンシー思考とは、自分が自分自身の行動の主体であるという自己認識を持つことです。従業員が自分自身の行動をコントロールできることを理解し、自分自身の行動の主体であることを強調することで、エージェンシー思考を高めることができます。
自己効力感
自己効力感を育むためには、以下の3つの方法があります。
過去の成功体験に焦点を当てる
自己効力感を高めるためには、過去の成功体験に注目することが有効です。研修では、成功体験を発見する方法がよく行われます。特に、成功に寄与した要因、特徴、強みを明確にすることで、より高い自己効力感を持つことができます。
ソーシャルモデリング
同じような状況にある人が成功するのを見ることで、自己効力感が高まることがあります。自尊心の低い従業員は、自分よりも優れたスキルを持っている人が他にいると自信を失うことがあります。そのため、自己効力感を高めるためには、このような思い込みの癖に気づき対処することが必要です。
社会的説得
言葉による説得は大きな自己効力感につながりますが、自信を持たせるのは難しい場合があります。言葉による説得だけでなく、成功しやすい状況を作り、失敗しにくいように支援することが重要です。
レジリエンス
レジリエンス力を高めるためには、以下の3つの方法を取ることが重要です。
- 自分の強みを見つけて、活用する。
- 回復した過程を振り返る。
- 支援を求めるスキルを持つこと。
レジリエンス力を高めることは容易ではないかもしれませんが、練習を重ねることで簡単になります。仕事や日常生活を改善するために、レジリエンス力を高めていきましょう。
詳しくは下記の記事を参考にしてください。
楽観性
楽観性を高めるためには、以下の3つの方法があります。
焦点を変えて問題を見る
楽観主義者は、問題に対してポジティブな視点を持っています。つまり、問題をチャンスととらえることができます。例えば、失敗したときには、その失敗から学ぶことができると考えることができます。失敗を避けるためには、それを予測し、対処する方法を見つけることもできます。問題に直面したときには、ポジティブな視点を持つことを意識して、チャンスととらえるように心がけましょう。
希望に満ちた目標を設定する
楽観主義者は、希望に満ちた目標を設定することができます。つまり、自分自身にとって重要で、達成可能な目標を立てることができます。このような目標を設定することで、自信を持って取り組むことができます。また、目標を達成するための具体的な行動計画を立てることも大切です。
感謝の気持ちを持つ
楽観主義者は、感謝の気持ちを持っています。自分が持っているものに感謝し、人々が自分を支えてくれたことに感謝することができます。感謝の気持ちを持つことで、自分自身の価値観を見直すことができます。また、感謝の気持ちを表現することで、他人との関係をより良好にすることができます。
以上のように、ポジティブな視点で問題を見る、希望に満ちた目標を設定する、感謝の気持ちを持つことが、楽観主義を身につけるための方法です。
まとめ
本記事では、心理的資本とは何か、心理的資本の高い人材のメリット、心理的資本強い人材育成の方法などについて解説しました。
心理的資本は、ウェルビーイング経営や人的資本投資とも強く結びついています。従業員の希望、効力、回復力、楽観性の4つの領域のうち1つでも開発すれば、従業員がイキイキと働けるエンゲージメントの高い職場づくりにつながるでしょう。
執筆者の紹介
久世浩司
ポジティブサイコロジースクール代表
応用ポジティブ心理学準修士(GDAPP)
認定レジリエンス マスタートレーナー
当スクール代表の久世浩司は、ポジティブ心理学とレジリエンスを専門にしています。慶應義塾大学卒業後、P&Gに入社し、その後は社会人向けのスクールを設立。レジリエンス研修の認知向上と講師の育成に取り組んでいます。NHK「クローズアップ現代」や関西テレビ『スーパーニュースアンカー』などでも取り上げられ、著書による発行部数は20万部以上。研修・講演会の登壇は上場企業から自治体・病院まで100社以上の実績があります。
主な著書
『「レジリエンス」の鍛え方』
『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』
『なぜ、一流になる人は「根拠なき自信」を持っているのか?』
『リーダーのための「レジリエンス」入門』
『なぜ、一流の人は不安でも強気でいられるのか?』
『親子で育てる折れない心』
『仕事で成長する人は、なぜ不安を転機に変えられるのか?』
『マンガでやさしくわかるレジリエンス』
『図解 なぜ超一流の人は打たれ強いのか?』
『成功する人だけがもつ「一流のレジリエンス」』
『眠れる才能を引き出す技術』
『一流の人なら身につけているメンタルの磨き方』
『「チーム」で働く人の教科書』