ウェルビーイングとは?

ポジティブ心理学の研究

2017年10月(初稿)
2022年12月(改訂)
 

ウェルビーイングとは何か?

ウェルビーイングとは、幸福や満足感といったポジティブな心理状態を意味します。また、自分の人生に満足している状態も、ウェルビーイングには含まれています。
 

ラテン語の「ベネッセレ」

ウェルビーイングの概念の起源は、ラテン語の「benessere(ベネッセレ)」にあると言われます。この言葉の意味は、「よく生きる」「前向きに人生を謳歌する」「人間味豊かな生き方」を表します。心理的な幸福だけでなく、包括的な生き方を意味する概念であることがわかります。

 

世界保健機関(WHO)憲章

また、ウェルビーイングは健康な状態を示す「ウェルネス」と近い概念を持ちます。ウェルネスに関しては、世界保健機関「WHO」が、憲章の中でこのように定義しています。
 

健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあること

 

主観的ウェルビーイング

幸福度研究の第一人者であるエド・ディーナー博士は、「主観的ウェルビーイング」を提唱し、その心理状態を測定するための尺度を開発し、多くの国で活用されています。
 
主観的ウェルビーイングは、本質的に主観的なものであり、健康や富などは含まれません。その構成要素として「幸福感」「ポジティブ感情」「人生に対する満足感」の3つがあります。
 

ポジティブ心理学における「最適機能」

さらにマーティン・セリグマン教授らによって創始されたポジティブ心理学では、その研究目的を「人の最適機能の科学的研究」と発表されています。この宣言(マニフェスト)の中では、「心の健康の要因」という言葉が使われています。
 

ポジティブ心理学は、人の最適機能に関する科学的研究である。その目的は、個人と社会の繁栄要因を見つけ促進することにある。ポジティブ心理学の流れは心理的疾患を超えた心の健康の要因を研究する心理学者の新しい決意を表している。

 
 
つまり、ウェルビーイングとは、広義の意味では人生に満足しよく生きることができている状態であり、心身ともに健康な状態であり、心理的・感情的に幸せな状態であり、心身の機能が最適に働いている状態であると言えます。


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2種類のウェルビーイング

ウェルビーイングには、2つの重要な側面があります。
 

ヘドニックな幸福

まず、ポジティブな感情や幸福感をどの程度経験するかという「主観的ウェルビーイング」と呼ばれるものです(Diener, 2000)。これは「ヘドニック」なウェルビーイングと分類されます。
 
通常、幸福の主観的感情を指す言葉として使われており、感情的要素(ポジティブな感情が高く、ネガティブな感情が低い)と認知的要素(人生に対する満足感)の2つの要素から構成されています。ポジティブな感情と人生に対する満足度がともに高いとき、個人は幸福を経験するとされています。
 

ユーダイモニックな幸福

もう一つが「ユーダイモニック」なウェルビーイングです。「自分が生きていることに意味がある」という目的意識です。これは人生の意義や目的意識により得られる満足感・幸福感を指します。キャロル・リフの「心理的ウェルビーイング理論」がこれにあたります。

エド・ディーナーの「主観的ウェルビーイング理論」

エド・ディーナー教授は、1984年に発表した論文「主観的幸福感」において、この概念を提唱した世界有数の 研究者の一人です。この分野への多大な貢献から、"Dr. Happiness (幸福博士)"というあだ名がつけられています。
 

主観的ウェルビーイングの定義

主観的ウェルビーイングは 「人の人生に対する認知的・感情的な評価 」と定義されています。

「認知的評価」とは、全体的な人生の満足度と特定の領域(例えば、家庭生活、キャリアなど)の満足度をどのように考えるの評価です。私たちが自分の人生について考え、評価するとき、認識した状態を自分自身の望ましいという基準に照らし合わせています。


「情緒的評価」は私たちの感情的な経験に関するもので、ポジティブな状態(例えば、喜び、希望、誇り)をより多く経験し、ネガティブな状態(例えば、怒り、嫉妬、失望)が少ない場合、その評価は高くなります。

 

世界各国で活用される主観的ウェルビーイング尺度

ディーナー教授によって作成された「主観的ウェルビーイング尺度」は、大学での研究者だけでなく、世界各国の政府でも使われている非常に汎用的な調査方法です。
 
ポジティブ心理学においても初期から参画し、マーティン・セリグマン教授と同じくポジティブ心理学の創始者の一人とされています。

2002年に行ったセリグマン教授との共同研究では、非常に幸福な個人に焦点を当て、米国の大学生を対象に幸福度のスクリーニングを行い、高い幸福度に影響を与える可能性のある要因を調査しました。


その結果、「高い幸福感を得るための唯一の鍵はないように見えるが、非常に幸福な人々は、豊かで満足できる社会的関係を持ち、平均的な人々と比較して一人で過ごす時間が少ない」ことが明らかになった(Diener & Seligman, 2002, p.83)。

 

主観的ウェルビーイングの構成要素

初期の研究で、主観的ウェルビーイングは以下の要素で構成されると考えられました。
 

  1. 頻繁に起こるポジティブな感情
  2. 頻繁でないネガティブな感情
  3. 生活満足度の認知的評価

 
さらに後期の研究では、3つの構成要素にまとめられています。

  1. 幸福感
  2. ポジティブ感情
  3. 人生に対する満足感

 
しばしば幸福感と主観的ウェルビーイングは混同されることがありますが、これらの構成要素を理解することで、単なる幸福以上のものを包含していることがわかります。測定をする尺度には、生活満足度を取り入れることで、過去の経験や将来への期待を含められています。

リフの「心理的ウェルビーイング理論」

心理学者のキャロル・リフは、ユーダイモニック・ウェルビーイングを6つの主要な心理的ウェルビーイングに分類し、非常に分かりやすいモデルを開発しました。
 
1. 自己受容 自分自身について肯定的な態度をとっていることを意味します。
 
2. 環境管理能力 日常生活の管理、自己の欲求を満たすための状況作りなど、環境要因や活動を管理する上で、機会を有効に活用し、使いこなしている感覚があることです。
 
3. 他者との良好な関係 相互の共感、親密さ、愛情を含む有意義な他者との関係に関与していることを反映しています。
 
4. 自己の成長 自分が成長し続けていること、新しい経験を歓迎していること、行動や自己の改善を時とともに認識していることを示します。
 
5. 人生の目的 強い目標志向を持ち、人生に意味があると確信していることを反映しています。
 
6. 自律性 自立していて、社会的な圧力とは無関係に自分の行動を制御していることを示します。

ストレスとの関係

心理的ウェルビーイングは、比較的安定しており、それまでの経験(例えば、幼少期の生い立ちなど)と生まれ持った性格の両方から影響を受けてきたと思われます。
 
ベースラインの心理的ウェルビーイングはかなり安定しているかもしれませんが、日々の出来事や経験も影響を及ぼします。例えば、どんなにレジリエンスのある人でも、日々の体験が常に悩みの種であれば、やがて非常に落ち込み、うつ状態になる可能性があります。仕事上のストレス要因に長期間さらされると、心理的ウェルビーイングに悪影響を及ぼすことを示す強力な証拠があります。
 
したがって、長期間のストレスは心理的ウェルビーイングにとって良いことではありません。心血管疾患、糖尿病などの血糖コントロールの問題、免疫系の不調など、深刻な病気につながる可能性が十分にあります (Chandola et al, 2008)。
 
つまり、リフらの理論では、幼少期の体験と基本的な性格が心理的ウェルビーイングの基盤を作り、日常の体験がポジティブであればそのレベルを良好に保つのに役立ちますが、ストレスが高い場合はそのレベルを下げ、ひいては健康状態の悪化につながると考えられます。
 

久世浩司(ポジティブサイコロジースクール代表)

まとめ

人生においてよりポジティブな瞬間を作り出し、自分の基本的な価値観を確認し、目標に向かって前進することができれば、人生の満足度を高め、ポジティブな感情バランスを手に入れるための道筋は十分に整っています。
 
人生100年時代と言われる中で、ウェルビーイングな状態を保ちながら人生をよく生きることは、かつてなく重要なテーマであると考えられます。
 

久世浩司(ポジティブサイコロジースクール代表)

引用文献

Diener, E. (2000) Subjective wellbeing: The science of happiness and a proposal for a national index. American Psychologist, 55, 34-43.
 
Ryff, C.D., Singer, B.H. and Love, G.D. (2004) Positive health: connecting wellbeing with biology. Philosophical Transactions of the Royal Society, 359, 1383-1394.
 
Chandola, T. et al., (2008) Work stress and coronary heart disease: What are the mechanisms? European Heart Journal, 29, 640-648.


久世浩司 

ポジティブサイコロジースクール代表
応用ポジティブ心理学準修士(GDAPP)
認定レジリエンス マスタートレーナー
 
慶應義塾大学卒業後、P&Gに入社。その後、社会人向けスクールを設立し、レジリエンス研修の認知向上と講師の育成に従事。NHK「クローズアップ現代」、関西テレビ『スーパーニュースアンカー』でも取り上げられた。レジリエンスに関する著書、多数。累計発行部数は20万部以上。
 

主な著書
『「レジリエンス」の鍛え方』
『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』
『なぜ、一流になる人は「根拠なき自信」を持っているのか?』
『リーダーのための「レジリエンス」入門』
『なぜ、一流の人は不安でも強気でいられるのか?』
『親子で育てる折れない心』
『仕事で成長する人は、なぜ不安を転機に変えられるのか?』
『マンガでやさしくわかるレジリエンス』
『図解 なぜ超一流の人は打たれ強いのか?』
『成功する人だけがもつ「一流のレジリエンス」』
『眠れる才能を引き出す技術』
『一流の人なら身につけているメンタルの磨き方』
『「チーム」で働く人の教科書』


 

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