【ポジティブ心理学】幸福優位7つの法則

ハーバード式最新成功のキー

ショーン・エイカー(著)高橋由紀子(訳)
改訂:2023/1/29
 

「幸福優位性」について書かれた本の紹介


私が本書を知ったのは、2010年、それもまだ発刊される前のことでした。「Fast Company」という雑誌で、ビジネスコンサルタントが書いた「ポジティブ心理学をビジネスに活かす」内容の本が発刊されるという記事を目にしたことがきっかけです。
 
当時は、ポジティブ心理学関連のビジネス書はまだ数少なかったため、書籍だけでなく、著者のショーン・エーカーによるオーディオブックも購入し、聴きながら読書しました。
 
2011年の夏には、本書が日本語に翻訳されました。魅力的なタイトル「幸福優位の7つの法則」と、高橋由紀子さんの丁寧な訳により、ビジネスパーソンを中心に読まれました。私たちのスクールでも、この本をきっかけにポジティブ心理学に興味を持ち、受講を決めた方が多数いました。本書は、ビジネスの世界にポジティブ心理学を紹介する大きな貢献をもたらしました。
 

ハーバード大学の講師が書いた「幸福学」

この本は、ハーバード大学で人気だったポジティブ心理学の講師であるエイカー氏が書いたものです。著者のエイカー氏は、ベストセラー「Happier」の著者であるタル・ベン・シャハー博士の弟子的存在です。本書は、エイカー氏がハーバードに入学した物語から始まります。
 
ハーバード大学は、成績トップだった学生が集まる大学ですが、入学後は半分以上が「平均以下」の成績になります。このため、多くの学生がうつ病を経験し、慢性的な不幸感に苦しんでいます。このため、「幸福の研究」であるポジティブ心理学の講義に多くの学生が参加しました。
 
本書では、ハーバードの学生調査と著者の大企業での調査・研修の結果、「幸福優位性を生み出す7つの法則」が紹介されています。これは、スティーブン・コヴィの「7つの習慣」に似たもので、ポジティブ心理学の調査に基づいたもので、幸福度が高いほど高業績や成功につながるという内容です。


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幸福には波及効果がある

研究から、人が幸せになると生産性や創造力が向上することが判明しました。また、幸せな気分は他人にも影響する「幸福の波及効果」があることも明らかになりました。すなわち、先に幸せになると、競争力の源泉となり、成功する可能性が高まることになります。著者の考えは「幸福は成功を先導する」ことです。
 
私はこの考えに非常に興味を持っています。私が働いていた外資系企業でも、ネガティブな上司から楽観的なリーダーに変わったことにより、部門の成績が大きく向上した経験があります。このことから、ポジティブなリーダーシップは効果的だと確信しました。
 
ただ同時に、「この考えはすぐには日本の企業にはなじまないかもしれない」とも考えます。危機感をもって不安や怒りを原動力とするリーダーが評価される文化や価値観があるからです。楽観的でポジティブなリーダーは逆に評価されにくい傾向があると思われます。特に管理職では、楽観的であるよりもやや悲観的で注意深い方が好まれる傾向があるようです。


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幸福なワークライフバランスを実現する

研究により、幸福なワークライフバランスは仕事の成果を向上させ、組織の生産性の上昇やチームの一致性の強化、さらに離職率の低減につながることもわかりました。
 
本書では、幸福なワークライフバランスを生み出す7つの方法が分かりやすく説明されています。それらの方法の説明に続いて、どのように仕事や家庭、そして人生で活用することができるかが具体的に述べられています。良い人生、良いキャリア、良い職場を作る方法が明確に記載されています。読者を興味を引き、やる気を刺激する内容です。
 
私は以前にUBS証券東京本店でセミナーに招かれました。そのセミナー後に「なぜポジティブ心理学に興味をもちましたか?」と聞かれたところ、人事担当者は「先にショーン・エイカー氏が来日して、経営幹部研修を受けました」と話していました。その研修で、ポジティブ心理学は仕事で活用できると信頼されたようです。
 
本書を読んで「長年ビジネス界にいた自分がポジティブ心理学を日本で伝えることに意味がある」と思い、著者のエイカー氏との驚くべき縁を感じました。
 
ビジネス関連の方には特におすすめの本です。是非購入して読んでください。
 


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目次

パートI 職場におけるポジティブ心理学――幸福優位性の発見/職場における幸せと成功/人は変わることができる
パートII 幸福優位7つの法則
法則1 ハピネス・アドバンテージ――幸福感は人間の脳と組織に競争優位をもたらす
法則2 心のレバレッジ化――マインドセットを変えて仕事の成果を上げる
法則3 テトリス効果――可能性を最大化するために脳を鍛える
法則4 再起力――下降への勢いを利用して上昇に転じる
法則5 ゾロ・サークル――小さなゴールに的を絞って少しずつ達成範囲を広げる
法則6 二〇秒ルール――変化へのバリアを最小化して悪い習慣をよい習慣に変える
法則7 ソーシャルへの投資――周囲からの支えを唯一最高の資産とする
パートIII 幸せの波及効果――幸福優位性を仕事に家庭に人生に応用す
 

久世 浩司(ポジティブサイコロジースクール 代表)

執筆者の紹介

久世浩司 

ポジティブサイコロジースクール代表
応用ポジティブ心理学準修士(GDAPP)
認定レジリエンス マスタートレーナー
 
当スクール代表の久世浩司はポジティブ心理学レジリエンスを専門にしています。慶應義塾大学卒業後、P&Gに入社し、その後は社会人向けのスクールを設立。レジリエンス研修認知向上と講師の育成に取り組んでいます。NHK「クローズアップ現代」や関西テレビ『スーパーニュースアンカー』などでも取り上げられ、著書による発行部数は20万部以上。研修・講演会の登壇は上場企業から自治体・病院まで100社以上の実績があります。
 

主な著書
『「レジリエンス」の鍛え方』
『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』
『なぜ、一流になる人は「根拠なき自信」を持っているのか?』
『リーダーのための「レジリエンス」入門』
『なぜ、一流の人は不安でも強気でいられるのか?』
『親子で育てる折れない心』
『仕事で成長する人は、なぜ不安を転機に変えられるのか?』
『マンガでやさしくわかるレジリエンス』
『図解 なぜ超一流の人は打たれ強いのか?』
『成功する人だけがもつ「一流のレジリエンス」』
『眠れる才能を引き出す技術』
『一流の人なら身につけているメンタルの磨き方』
『「チーム」で働く人の教科書』