【要約】ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則

ロサダ比とは?

バーバラ・フレドリクソン(著)高橋由紀子(訳)
初稿:2013年10月5日
改訂:2022年12月30日
 
 

ポジティブ感情の研究について書かれた本

3:1の法則

 
本書はかわいらしいデザインの装丁ですが、いたって真面目で実用的な本です。別に推薦した「幸福優位の7つの法則」は当スクールの男性の受講生に愛読されていますが、この「3:1の法則」は女性の受講生によく読まれています。
 
おそらくこの本のテーマである「感情研究」が、感情に関心の高い女性の琴線に触れたのでしょう。
 

若手の女性心理学者のデビュー作

著者のバーバラ・フレドリクソン博士は、ポジティブ心理学界の若手スターです。
 
米国心理学会が選んだ、記念すべき第一回「ポジティブ心理学テンプルトン賞」最優秀賞を受賞。マーティン・セリグマン教授らポジティブ心理学の創始者たちに支援され、ポジティブ感情研究の第一人者として一躍スターダムにのしあがりました。その後も数々の賞を受賞し、最近ではIPPA(国際ポジティブ心理学協会)初のクリス・ピーターソン 金メダル賞も受賞しています。その研究の功績が認められ、ダライ・ラマとも謁見しています
 
Barb(バーブ)という愛称で呼ばれ、誰からも親しまれているフレドリクソン博士と初めてお目にかかったのは、2013年7月のIPPA世界会議でのワークショップでした。「ポジティブ感情とゲノム」という難しいテーマの研究の発表でしたが、知的で落ち着いた良い印象をもちました。とくに質問のハンドリングに知性と人格を感じさせました。
 
人気ポジティブ心理学者のトップ5に入る方ですが、偉そうな態度は全くなく、世界中から講演に招かれているのもうなづけます。次期IPPA会長に若くして選出されてしまったため、今後はますます有名になると思われます。


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ロサダ比=3:1

本書では、ポジティブ感情(Positive Emotion)のことを「ポジティビティ」(Positivity)という博士の「造語」を使って語られています。(原書のタイトルはそのままの「Positivity」です)おそらく、心理学者の書く難解な本になることを避けるために、より平易な一般書的な言葉を選択したのでしょう。実際、この本は非常にわかりやすい内容になっています。
 
中心テーマには、訳書のタイトルともなったポジティブ感情とネガティブ感情の黄金比とも言える「3:1」に関する研究があります。この比率はマーシャル・ロサダの数学モデルによるものですが、最近そのモデルが現在他の心理学者からチャレンジを受け、ポジティブ心理学を研究している人達の中ではちょっとした話題となっています。科学は常に進化し続けるため、心理学者は絶対値を断定することを避けますが、この「3:1」という数値はメディアで話題になり一人歩きした感があります。
 
しかしながらフレドリクソン博士の反論にあるように、ポジティブ感情が高くネガティブ感情が低いことは、幸福度や健康などへのメリットが大きいという実証はゆらぎません。
 

ポジティビティ比とは?

さて、本書の中には、「あなたのポジティビティ比をチェックする」という自己診断テストがあります。「過去24時間にどんな感情を味わいましたか?」という質問で、「怒り、いらだち」や「愉快」などを5段階評価する簡単なものです。本書を購入された方はぜひやってみて下さい。気づきが得られると思います。
 
私は前回やったときよりも、若干ポジティビティ比がよくなっていました。興味深いのが、ポジティブ感情の頻度は高まっていましたが、ネガティブ感情もかなり感じるようになっていたことです。
 
振り返ると、ポジティブ心理学によってポジティブ感情をより深く頻繁に感じるようになったのですが、同時にマインドフルネスを生活に取り入れているため、ネガティブな感情を抑圧するのではなく受け入れられるようになったからだと思います。
 

ポジティブな感情を豊かにする

ポジティブな感情を豊かにするには(つまり幸せになるには)、まずポジティブな感情は何かを認知することから始まります。本書には10のポジティブ感情が詳しく書かれており、勉強になります。その結果、視野が広がる、創造力が高まる、交渉力に長ける、健康になるなどのさまざまな便益が実証ベースで記されています。
 
私のお気に入りの部分は、博士の個人的な逆境体験、つまり9.11テロ事件や夫の入院を乗り越えて、その体験を振り返ることで教訓を得た「レジリエンス(逆境力)」の物語についてです。普段からポジティブな感情を豊かにすることで、いざというときに心が折れない予防となりうる。私自身心が折れそうになった経験があったので、共感できる内容でした。


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いい人生を送るために感情について学ぶ

日本では、海外のように学校教育の中で感情について教えられていないのか、また文化的にも心と感情を分けて考えないでいたからか、感情に対しての関心が薄いように思われます。しかしながら、怒りや不安などのネガティブ感情に悩まされている人は多く、喜びや感謝などのポジティブ感情に鈍感な人も多い。
 
いい人生、いいキャリアを送るためにも、本書が広く長く読まれることで、感情について継続的に学ぶべきだと思います。


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目次

 
目次
第1部 ポジティブ感情が人生に欠かせない理由(ポジティビティに関する重要な事実
ポジティビティは手段であって、目的ではない
ポジティビティとは何か
ポジティビティは精神の働きを広げる
ポジティビティは最良の未来を作る
立ち直りの早い人の共通点
「ポジティビティ:ネガティビティ」感情の黄金比)
第2部 ポジティビティ比を科学的に上げる方法(自分の現在置を知る
ネガティビティを減らす
ポジティビティを増やす
「繁栄」に続く未来へ)
 
 

久世 浩司(ポジティブサイコロジースクール 代表)