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【書評】世界でひとつだけの幸せ
ポジティブ心理学が教えてくれる満ち足りた人生

マーティン・セリグマン (著), 小林 裕子 (翻訳)

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ポジティブ心理学の創始者セリグマン教授の書いた世界的ベストセラー

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全米心理学会会長時にポジティブ心理学を提唱してから約3年後にマーティン・セリグマン教授が書いた、初期のポジティブ心理学についてまとめられた著作「Authentic Happiness」の翻訳書です。

幸福度の研究から楽観性、フロー理論と充実感、強みとしての徳性、そして仕事における満足感と幸せな子供を育てる方法、生きる意味など、多岐に渡ってポジティブ心理学的な研究と考えが記されています。

本書の特徴は(セリグマン教授前作の「オプティミストはなぜ成功するか」でも売れた秘訣となった)自己診断テストが豊富に含まれています。さらには、「Authentic Happiness.com」において本書に含まれているものと同じ無料のオンライン診断テストを提供することで、メディアミックスを行っています。数多くの心理学テストをできるため、とても役に立つサイトとなっています。日本語診断もありますので、ぜひ皆さんも試してみて下さい(大学側にとっては、世界中の人々から心理学データを採集できるため、Win-Winとなっています)

前作の「オプティミストはなぜ成功するか」で掲載された研究は、基本的にはセリグマン教授が主任研究者または共同研究者として関わったものがほとんどでした。しかしながら、本書においては、ポジティブ心理学に賛同し、ポジティブ心理学の大きな傘のもとで研究している学者の研究を体系的に紹介するといった、プロデューサー的な役割を果たしています。エド・ディーナー博士の主観的幸福度の研究があり、チクセントミハイ博士のフロー理論が記され、さらにはフレドリクソン博士のポジティブ感情の研究やロバート・エモンズ博士の感謝の研究などが紹介されています。

本書はセリグマン教授が一研究者として執筆した本というよりも、ポジティブ心理学の親としての立場でポジティブ心理学を一過性のムーブメントから、心理学における一つの領域として確立しようとする意図が見られます。実際、今年(2013年)のIPPA(国際ポジティブ心理学)世界会議で、会長のヴァーランド氏が高らかに宣言したように、その当初の4目的は達成されていると言えるでしょう。

私が本書で心に残った部分は、強みとしての徳性と美徳の研究、そしてその分類法であるVIA-ISが開発されるまでの過程における実話です。この強みの研究に関わった人々の貢献は大きいと思います。なぜなら、この研究がなければ、ポジティブ心理学はただのハピロジー(幸福学)として短命に終っていた可能性があるからです。この強みの研究がなされ、その集大成として「Character Strength and Virtue(強みとしての徳性と美徳)」の千ページ以上の研究者用ハンドブックが発刊され、ポジティブ心理学は地に足のついた社会科学の一分野になったと思われます。

その始まりは、「いっしょにプロジェクトを立ち上げよう」とメイヤーソン財団の代表ニール・メイヤーソンがセリグマン教授にかけた一本の電話から始まりました。相談の結果、若者を対象とした『善良な性格の分類学』が必要とされている、と合意したのでした。当時の心理学界では、しかしながら心の疾患の分類システムである「DSM-III」(現在はDSM-V)は浸透し、精神疾患の治癒と治療に活かされていました。ただ、ポジティブ心理学をバックボーンとした、人が価値ある人生を送るための、または幸せで充実した有意義な人生を暮らすために必要な特性を測定する分類法はなかったのです。

この一大プロジェクトを成功させるためには、経験豊富な信頼できるリーダーが必要でした。そこでセリグマン教授が選んだのが、かつて多くの共同研究を行ったクリス・ピーターソン博士だったのです。しかし、分類法を作成するには少なくとも3年間はかかると予想されたため、多忙なピーターソン博士に指揮をとってほしいというのは難しい依頼だったのです。ところが、返事は「イエス」でした。

「不思議な偶然だ。昨日は私の50歳の誕生日で、残りの人生をどう過ごそうかと考えたところだったんだ。喜んでお引き受けするよ」

まさにシンクロニシティだったと思われます。卓越したリーダーを据えたことで、このプロジェクトの成功は半分以上決定づけられたも同然だったのでしょう。また、ピーターソン博士にとっては、そのキャリアの節目にあたる50歳に偶然もたらされた機会であり、その機会を自然体で受け入れることで、「強み研究の世界的第一人者」「VIA-ISの開発者」「世界で最も多く論文が引用された心理学者の一人」というキャリアの飛躍のきっかけとなったのです。いわゆるプランドハプスタンス(Planned Happenstance、計画された偶発性」だったと思われます。

私は偉大な商品開発やプロジェクトの達成は、性格の異なる二人のコンビによって成し遂げられると考えています。日本で言えば、ソニーの井深大と盛田昭夫、ホンダの本田宗一郎と藤沢武夫などが思い浮かびます。このポジティブ心理学におけるセリグマン・ピーターソン コンビもその一例です。二人は学習性楽観主義の研究からポジティブ心理学の立ち上げ、そして強みとしての徳性の研究とその分類法であるVIA-ISの開発などの成果を生み出しています。

しかしながら、ピーターソン博士は若くして昨年2012年にお亡くなりになりました。最後に訪れた外国は日本だったのではないかと、その最後のブログを見て推察されます。2013年のIPPA世界会議では二日目夜の2時間に渡りピーターソン博士を回想する式が開かれ何百名もの人たちが集いましたが、多くの人に愛されていた学者だっただけに、その早すぎる死が悔やまれます。セリグマン教授も盟友を先に亡くしたからなのか、非常に悲しそうで落胆した様子でした。ピーターソン博士という相棒亡き後のセリグマン教授がどこに向かうのか、個人的には気になります。

話はそれましたが、本書には他にもセリグマン教授がバカンス先で偶然大物の心理学者であるチクセントミハイ博士と出会い、お互い意気投合してポジティブ心理学を世間に初めて本格的に訴えた共同論文を発表するに至ったエピソードなども語られています。心理学の勉強にもなり、読み物としても楽しめる本です。

TEDでのセリグマン教授のビデオも併せてご覧下さい。


目次


目次
1 大切なのは幸せになりたいという意欲
・心から幸せだと感じるためには
・心の強さを育てる心理学
・人が幸せを求める理由
2 あなたにとっての強みと美徳
・幸せをもたらす美徳とは何か
・自分のとっておきの強みを見つけだす
3 幸せというゴールを目指して
・仕事での満足感と個人的な満足感
・「愛すること」と「愛されること」
・子どもたちをポジティブに育てる


久世 浩司(ポジティブサイコロジースクール 代表)