【要約】LIFE SHIFT(ライフシフト) 100年時代の人生戦略

人生100年時代での生き方と働き方とは?

この記事では、人生100年時代にキャリアを見直すときに参考となる、キャリアデザインについてわかりやすく解説された良書を紹介します。今後の生き方やキャリアについて悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
 

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人生100年時代の準備はすぐにでもする必要がある

 
『LIFE SHIFT: 100年時代の人生戦略』は、リンダ・グラットン教授とアンドリュー・スコットによる本で、人生が100年続く時代にどのように生き、働くかを考えています。
 
この本を初めて読んだのは、翻訳版が出たばかりの2016年ごろでした。グラットン教授の前作『ワーク・シフト』が有名だったこともあり、この本もすぐに話題になりました。(ちなみに、原書のタイトルは『The 100-Year Life』ですが、日本では前作とシリーズにするために『ライフ・シフト』というタイトルにしたのだと考えます。このタイトル変更が国内でベストセラーになった理由の一つだと思います)
 
私自身、50歳を迎え"100年人生"の半分を過ぎた今、改めてこの本を読み直したのですが、前にはなかった多くの新しい発見や心に響く言葉がありました。以前は他人事だと思っていた内容が、今では「自分のこと」として感じられるようになったからです。
 
特に印象に残ったのは、著者が提案する人生100年時代に必要な「3つの資産」についてです。「生産性資産」「活力資産」「変身資産」をどうやって手遅れになる前に築き、100年を充実して生きるための準備をするかが重要です。実際に準備を始める時間はあまりなく、すぐに計画的に取り組まないと間に合わないと焦りを感じました。
 

生産性資産〜スキルと知識の価値〜

 
生産性資産とは、仕事で成功し、所得を増やすための要素を指します。最も分かりやすい生産性資産は、長年かけて身につけたスキルと知識です。これらは、仕事において高い生産性を発揮するための基盤となります。
 
特に重要なのは、互いに似たスキルや専門知識を持ち、信頼し合いながら成長を支え合う小規模な仕事仲間のネットワークだとグラットン教授は伝えます。
 
このようなネットワーク(「ポッセ」と呼ばれます)は、職業上の社会関係資本を築き、生産性を維持する助けになります。同じような考え方を持つ仕事仲間との関係は、互いの成長と成功を後押しします。
 
さらに評判は無形の資産であり、周囲の人々によって形成されます。評判は、所属する組織や他人の評価に基づいて決まることが多いです。キャリア全体を通じて一貫して重要なのが評判です。特に、転職や他の業界に移る際には、良い評判が大きな意味を持ちます。新しい分野に移るときには、汎用的なスキル・知識と良好な評判の組み合わせが大いに役立ちます。
 
これらの要素を組み合わせて、より良いキャリアと生活を築いていくことが重要です。
 

活力資産〜健康と幸福の基盤〜

 
活力資産とは、肉体的・精神的な健康と幸福のことを指します。これらは、長期にわたって豊かな人生を送るために欠かせない要素です。
 
筋肉を鍛えるのと同じように、脳も繰り返し使用して訓練を積むことで、その機能を高めたり、ダメージからの回復を促進することができます。逆に、脳を使わないと次第に衰えてしまいます。継続的な学びや新しい挑戦を通じて、脳の活力を維持することが重要です。
 
精神的な健康と幸福感を維持し、活力資産を形成するためには、前向きな親しい友人たちのネットワークが重要です。自己再生を助ける友人関係は、感情的な投資が必要であり、長い時間をかけて築かれます。これらの友人との関係は、ストレスを軽減し、ポジティブな感情を育むのに役立ちます。
 
まとめると、活力資産は肉体的・精神的な健康と幸福を維持するためのものであり、脳の鍛錬や前向きな友人関係の構築がその形成に大きく寄与します。これらを意識して取り組むことで、長い人生を豊かに生きる基盤が築かれます。
 

100年ライフと変身の必要性

100年ライフを生きる人々は、その過程で多くの大きな変化を経験し、さまざまな変身を遂げることになります。そのために必要な資産が「変身資産」です。これは、人生の途中での変化や新しいステージへの移行を成功させるための意思と能力を指します。
 
変身資産には以下の要素が含まれます:

  • 自己認識: 自分についてよく知っていること。
  • 多様な人的ネットワーク: 多様性に富んだ人間関係を持っていること。
  • 新しい経験に対するオープンな姿勢: 新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていること。

人が大きく変わるのは、一歩下がって内省し、その結果について判断を下すときです。これは行動や感じ方だけでなく、知識の獲得方法そのものを変えるときにも起こります。つまり、何を知っているかだけでなく、どのように知っているかを変えることが変身の鍵となります。
 
変身を成功させるためには、大規模で多様性に富んだ人的ネットワークが重要です。前述の「ポッセ」や「自己再生のコミュニティ」は規模が小さく、同質性が高いため、変化を促すよりも現状を維持する傾向があります。多様な人的ネットワークの中では、憧れを抱くことができ、変身のお手本となる人を見つけることができます。
 
まとめると、変身資産は100年ライフを生き抜くために不可欠であり、自己認識、多様なネットワーク、新しい経験へのオープンな姿勢がその形成に重要です。多様性に富んだ人的ネットワークの中で、自身の変身を後押しする要素を見つけることが成功の鍵となります。
 

るつぼの経験とは

グラットン教授は本書で「るつぼの経験」を紹介しています。変身資産にはこのるつぼの経験が不可欠であるというのです。
 
るつぼの経験とは、人生において試練や困難に直面し、それを乗り越えることで大きく成長する経験のことを指します。リーダーシップの研究者であるウォーレン・ベニスらは、多くのリーダーに人生を振り返ってもらい、明確な自分らしさと強固な倫理基準を持つリーダーの共通点として「るつぼ」の経験を挙げました。金井先生が言う「一皮むけた経験」に等しい考えです。
 
単にこのような経験をするだけでは不十分で、その経験について深く自問することが重要だそうです。自問を通じて、世界に対する見方を変え、自分が接した人々の人生のストーリーを自分のものとして取り入れることができます。
 
さらに重要なのは、本やウェブサイトを通じて知識を得るだけでなく、実際に人々と顔を合わせ、理屈を超えた感情レベルの経験をすることです。このような経験を通じて、私たちは目の前の人々の人間存在そのものに触れ、本質的な理解と共感を得ることができます。
 

中年期は資金計画に最適な時期

最後にお金の話です。人生100年時代では、お金の必要性がさらに増します。
 
お金に関する良質な判断は、経験および知識と分析能力の二つの要素に基づいています。若者は明晰な分析能力を持っていますが、金融商品に関する経験と知識が乏しいです。
 
一方、年配者は豊富な経験と知識を持っているものの、分析能力が減退し始めます。これらの要素の総和が最も大きくなるのが40〜50代であり、この時期に金融に関する判断能力が最も高まります。
 
したがって、判断能力が最も充実している中年期に将来の資金計画を立てることは理にかなっています。この時期に計画を立てることで、より確実で安定した将来を見据えた資金管理が可能になります。
 
高齢になって判断能力が衰え始めてから貯蓄不足を解決しようとするのは賢明ではありません。焦って対策を講じるよりも、中年期にしっかりとした資金計画を立てることで、リスクを減らし、安心した老後を迎えることができます。
 

長く働くためには柔軟さが大事

『LIFE SHIFT: 100年時代の人生戦略』を通じて伝えられるメッセージの一つは、人生100年時代において、生産性資産・活力資産・変身資産という3つの無形資産を早期から形成することの重要性です。これらの資産は、長い人生を豊かに生きるための基盤となります。
 
長生きする時代において、経済的な安定を確保するためには、できるだけ長く働いて年金を受け取る時期を遅らせることが理にかなっています。長く働くことで、経済的な余裕が生まれ、安心して老後を迎えることができます。
 
長く働くためには、自分と相性の良い仕事やビジネスパートナーを見つけ、やりがいの感じられる仕事を続けていく柔軟性が必要です。常に有意義な仕事ができるとは限らないため、仕事の捉え方を柔軟に変えることが重要です。
 
有意義な仕事に常に恵まれるわけではない時にこそ、活力や働きがいを満たすための「ジョブクラフティング」のスキルが求められます。ジョブクラフティングとは、自分の仕事の内容や環境を自ら工夫し、より充実したものにする方法です。これにより、どんな状況でも働きがいを感じ続けることができ、長期にわたるキャリア形成が可能となります。
 
まとめると、長く働くためには、柔軟さとジョブクラフティングのスキルが重要です。無形資産を早期に形成し、仕事の選択や捉え方を柔軟に変えながら、自分に合った仕事を続けることで、経済的な安定と充実した人生を実現することができます。

執筆者の紹介

久世浩司 

ポジティブサイコロジースクール代表
応用ポジティブ心理学準修士(GDAPP)
認定レジリエンス マスタートレーナー
 
当スクール代表の久世浩司はポジティブ心理学レジリエンスを専門にしています。慶應義塾大学卒業後、P&Gに入社し、その後は社会人向けのスクールを設立。レジリエンス研修認知向上と講師の育成に取り組んでいます。NHK「クローズアップ現代」や関西テレビ『スーパーニュースアンカー』などでも取り上げられ、著書による発行部数は20万部以上。研修・講演会の登壇は上場企業から自治体・病院まで100社以上の実績があります。
 

主な著書
『「レジリエンス」の鍛え方』
『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』
『なぜ、一流になる人は「根拠なき自信」を持っているのか?』
『リーダーのための「レジリエンス」入門』
『なぜ、一流の人は不安でも強気でいられるのか?』
『親子で育てる折れない心』
『仕事で成長する人は、なぜ不安を転機に変えられるのか?』
『マンガでやさしくわかるレジリエンス』
『図解 なぜ超一流の人は打たれ強いのか?』
『成功する人だけがもつ「一流のレジリエンス」』
『眠れる才能を引き出す技術』
『一流の人なら身につけているメンタルの磨き方』
『「チーム」で働く人の教科書』



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