この春、NHKでレジリエンスの特集番組が放送されました。
クローズアップ現代“折れない心”の育て方 ~「レジリエンス」を知っていますか?
(2014年4月放送)
レジリエンスとは、ストレスや逆境、困難からの「復元力、回復力、再起力」を意味します。折れることのないしなやかな竹にたとえられ、レジリエンスを鍛えることで、めまぐるしく変化する状況にも柔軟に対応できる「折れない心」を育てることができます。
レジリエンスは、個人だけでなく組織が成長していくためにも重要なキーワードとなります。
アメリカ陸軍やシンガポールの刑務所などでもレジリエンス研修が導入され、メンタルヘルスの改善や生産性向上などの効果が実証されています。
海外では多くの企業や学校がレジリエンス研修を実施しています。
企業の人事担当者が抱える重要な問題として、「メンタルヘルス」「人事育成」の二つが挙げられています。
景気低迷、人員削減、採用抑制、早期退職、離職率増加、労働時間の増加、労働士気低下、チームワーク崩壊、情報化・グローバル化などへの不適応…。
これらのネガティブなキーワードは、メンタルヘルスの不調を引き起こす要因となるものです。また、プライベートにおける様々な出来事(独立、結婚、妊娠・出産・子育て、離婚、病気・怪我、親の介護、家族の死別など)や災害などもストレスを生む原因となります。
「ほぼすべての人が潜在的なメンタルリスクを抱えている」今日、メンタルヘルスケアは、企業にとって深刻な課題となっています。
しかし、メンタルヘルスと人事育成の問題を別々に対応し、「休職する不調者を減らす・職場復帰を支援する」というマイナスを減らすための従来型のメンタルヘルス対策をするだけでは、組織の成長はのぞめません。
レジリエンス研修は、「生産性を高めるメンタル対策」として機能します。
本書は、レジリエンスが個人そして組織に果たす役割や可能性を明らかにし、レジリエンス研修を導入するプロセスや効果、成功させるポイントを紹介しています。
組織が変化に適応する「予防型・未来志向型」の力であるレジリエンスを強化し成長するためには、構成員一人ひとりのレジリエンスの核となる6要素「信念、人間関係、考え方、専念する力、自己コントロール、良い習慣」を高めることが重要です
レジリエンス研修によって、個人、組織がどのような効果が得られるか、以下のように説明されています
個人:「ビジネスパーソン一人ひとりも、自らの手で心身の健康を維持し、管理し、起こり得るリスク、困難、変化への対応力を身につけ、不足の事態から自らの手で立ち直るレジリエンスを強化することができる」
組織:「企業の組織戦略において、従業員個人に本来備わっている『回復力』を強化すること、それを通して職場やチームへの適応力や問題対処能力を向上させ、結果として組織全体をしなやかに強くし、生産性を向上させることができる」
レジリエンスの重要性を知る人は、おそらくその気づきを周りにも伝えていきたいと感じ、本書で紹介された企業が抱える問題にも強く共感することでしょう。
国内外の組織へのレジリエンス研修の導入事例から、人づくり組織づくりに関連する諸問題に対処していくための多くのヒントを得られるのではないかと思います。
はじめに
序章 いま問われる、組織のあり方
―「不調者」対応から「変化に強い」組織づくりへ
事例) 大災害からの復興にみる企業のレジリエンス
第1章
人を根っこから成長させる「レジリエンスビルディング」
―プログラムが生まれた背景と広がり
事例) ダイバーシティ推進におけるレジリエンスビルディング
第2章
レジリエントな組織づくりのために
―変化に強い組織のつくり方
事例) 組織改革にレジリエンスを導入
事例) 従業員のレジリエンスへの投資とチャレンジ
第3章
個人へのフォローアップ
―変化に強い社員のつくり方
事例) メンタルヘルス予防策からレジリエンス強化策へ
事例) 社員一人ひとりの健康を持続的な成長につなげる
付録 レジリエンスの強化に使えるウェブサイト・アプリの紹介