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【書評】8週間で幸福になる8つのステップ

アンソニー・M・グラント (著), アリソン・リー (著), 石川 園枝 (翻訳)



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オーストラリアのTV番組をもとにした、幸福度を高める8つの方法が書かれた本

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本書は、オーストラリアのTV番組「Making Australia Happy」において、20代から60代の8人の「あまり幸せでない」男女が集められ、彼らを8週間で見違えるように健康にし幸福にする実験がまとめられた本です。

幸福度を科学的に高めることを証明するために、一流のエキスパートによるチームが編成されました。

リーダーを司ったのは、著者のアンソニー・グラント博士。名門シドニー大学で、世界初となるコーチング心理学修士課程を立ち上げ、ポジティブ心理学にも詳しい心理学者です。ハーバード大学メディカルスクールで毎年行われているコーチング心理学とポジティブ心理学に関する会議での講演も好評を得て、世界的にも名が知られています。

このチームのユニークな点は、マインド(心理)だけでなく、ハート(感情)とボディ(身体)の専門家も招集されたこと。ネガティブ感情を優しく低減することに実証性のある「マインドフルネス」分野から、ACT(アクセプタンス・コミットメント・セラピー)で有名なラス・ハリス博士が、さらにはフィットネスの専門家も名を連ねています。このチームが被験者の思考・感情・行動にポジティブに働きかけ、どのような変容を生じるかが科学的に計測されました。

ポジティブ心理学を含めた心理学における介入法(有為な変化を起こすための方法)は、マインドに偏りすぎているという批判があります。この本で記されている「幸福度を高める8ステップ」は、マインド・ハート・ボディのそれぞれに根拠のある介入を行っているバランスの良さに特徴があると言えます。

これら8ステップの多くが、ポジティブ心理学で研究されている「親切心」「感謝」「許し」「人とのつながり」「強みの把握と活用」です。しかし、その他にも運動・エクササイズや栄養バランスのある食事、質の高い睡眠の必要性が提唱されています。また、マインドフルネスにおける呼吸法や、ACTの脱フュージョン(Defusion、ネガティブな思考・感情を抑圧することなく、その影響を最小化する技法)も薦められており、より複合的な介入法となっています。

ポジティブ心理学における介入法は、その対象とする「心理的な状態がゼロ前後にある人」をプラス5から10に活性化することには効果があります。しかしながら、本書における被験者のような「心理的な状態がややマイナスにある人」にとっては、その効果が限定される可能性があります。例えば、心の悩みや不安を抱えながら「では今日一日で5つの親切な行いをしてください」と言われても、素直に実行することができないからです。また、ある人に強い敵対心や恨みを抱きながら、「自分の苦手な人を許してください」と命じられても、抵抗してしまうでしょう。

しかしながら、今回グラント博士がハリス博士と共同で行ったように、マインドフルネスやACTの介入法を使うことで、心理状態をややマイナスからゼロに回復することは可能です。そして、ポジティブ心理学の介入法を活用すれば、幸福度を高めプラスに向上させることは不可能ではありません。実際、本書における8週間の「実験」の結果が、その効果を物語っています。

今年7月に行われたIPPA(国際ポジティブ心理学協会)世界会議でも、ポジティブ心理学とマインドフルネスを組み合わせた研究の発表が多く行われていました。どちらの分野もエビデンスベースの実証科学という共通点があるため、相性が良いからだと思われます。

ポジティブ心理学もマインドフルネス/ACTも、過去十年間に大きな発展を遂げて来ました。世界中で研究者や実践者が増加していることからも、時代のニーズがあるのだと思われます。とくに本書の舞台となるオーストラリアでは、この両分野が幅広く受け入れられています。オーストラリアが世界でトップレベルの幸福度の高さを誇る背景には、これらの分野の貢献があるのだと考えられます。

久世 浩司(ポジティブサイコロジースクール 代表)

目次

Part1 スタートする前に知っておきたいこと
幸福になるということ
幸福の習慣
幸福ってなに?
幸福の円グラフ
幸福になるための8つのステップのプログラムの効果を上げるには
8つのステップ
8人の参加者

コラム ポジティブ心理学

定説を覆す
注意が鍵
心と脳の幸福

コラム 瞑想の効果

変わるということ
モチベーションと目標
変化を記録する
体はすべての基本
運動
事実を知る
目標を立てる
呼吸
行動を起こす
進歩を記録する
体を動かすためのコツ
食事と栄養
ケイドの食生活
睡眠
とにかく体を動かすことが大切
記録をとる

コラム 睡眠は気分を左右する

Part2 幸福になる8つのステップ
幸福指数
幸福の構造
幸福は測れるのか?
幸福指数の算出法

ステップ1 目標と価値観
弔辞を書く理由
真の価値観は選択の自由をもたらす
「幸福先送り症候群」
自分への弔辞を書く
弔辞を書く前に
弔辞を書いたあとに

ステップ2 無私無欲の親切な行い
利他主義の動機
幸福な人は利他的
利他主義は幸福を呼ぶ?
利他主義は害になることもある?
利己的な親切はあだになる?
利他主義のリトマス試験
無私無欲の親切な行いを実践する
組織化された親切
無私無欲の親切な行いを科学する
実行に移す

コラム 税金を払っても気分がよくなる?

ステップ3 マインドフルネス
マインドフルネスとは?
ネガティブな考え
ネガティブな考えと、心の批評家
マインドフルネス・エクササイズ
つながり
家でもマインドフルネスを実践
脱フュージョン
脱フュージョンのエクササイズ

コラム マインドフルネス

ステップ4 強みと問題解決
強み(長所)に重点を置くアプローチと、解決志向アプローチ
自分の強みを知る
強みを知ることから問題の解決へ
解決志向
解決志向でポジティブに変わるには?
不可能を可能にする魔法の質問(マジック・クエスチョン)
「未来からの手紙」

ステップ5 感謝
感謝はあらゆる宗教の基盤
感謝すると健康になれる?
感謝は広がる
感謝の恩恵
感謝する筋肉?
「3つのいいこと」エクササイズ