ポジティブ心理学×幸福学
【要約】「幸せをお金で買う」5つの授業
研究に基づいた「幸せな生活に必要なお金の使い方」のヒントを学ぶ
今回は、エリザベス・ダン博士とマイケル・ノートン博士の共著『「幸せをお金で買う」5つの授業』を紹介します。(原題 Happy Money -The Science of Smarter Spending)
「ハッピーマネー」の5つの原則を学ぼう
「幸せはお金では買えない」というのは嘘だと主張するノートン博士。本書の目的は、お金を使って「幸福度をもっと上げられる」ことを目指すことです。
5つの「ハッピーマネーの原則」を実践することで、満足感や幸福感が向上することを紹介します。
原則1:経験を買う
原則2:ご褒美にする
原則3:時間を買う
原則4:先に支払ってあとで消費する
原則5:他人に投資する
「ハッピーマネーの原則」は個人にだけ適用するものではなく、企業や団体にも応用できます。企業が「ハッピーマネーの原則」を従業員や顧客に実践することを後援することで、企業にもメリットがあるという例も紹介されています。これらは、お金だけでなく新しい形の報酬の支払い方に関するヒントとなります。
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経験を買う
「経験的な買い物」(例えば旅行や特別な食事)は物理的なモノを買うよりも幸福度が高まります。以下のような経験をすることで、お金を費やしたことに対して最大の達成感が得られます:
- 社会的なつながりを生む経験
- 楽しい思い出になる経験
- 自分の理想の自己像に結びつく経験
- 滅多にないチャンスを提供する経験
これらの社会的なつながりや良い思い出、自己に対する肯定的な感情や自信は、幸福を支えるレジリエンスの要素となります。この経験から得られる満足感は時間の経過とともに増加し、持続する幸福につながります。
一方で、物質的なものを買うことで即座に喜びを得られますが、それは一時的なものであり、「物質的なものへの誘惑に陥らないように、経験的なものから得られる幸福を逃さないように」、お金の使い方に注意することが大切です。
「時間の価値」に関する注意点-「時間とお金」の関係
アメリカの研究によると、時間給の仕組みで働く人は、より多く働かなければならない気持ちが強くなります。お金にならないが感情的な報酬のある活動(たとえば、音楽を聴いたり、ボランティアを行うこと)の意欲が低下する傾向があります。好きな音楽を聴いていても、「この時間でいくら稼げたか」と考えては、本当の意味で楽しむことはできません。
時間とお金は場合によっては交換できますが、時間をお金に換算することは、幸福の観点からは有害であることもあります。日本ではパートやアルバイトとして働く人が増加し続けており、懸念すべき点です。
「幸せを味わうための時間」にお金を使う
「稼ぐための時間」だけでなく、「幸せを感じる時間」を大切にすることが大切です。
多くの人は仕事や通勤、家事に追われ、自由な時間がないと感じています。「世界幸福度報告書」によれば、日本の幸福度は156カ国中43位と、先進国の中では低い順位です。
デンマークは幸福度第1位であり、年間5週間の有給休暇が取得できますが、長期休暇制度や有給休暇の消化率、労働時間などの調査から、日本人の「幸せを味わうための自由な時間」は、幸福度上位の国々に比べて少ないことが分かります。
「通勤、テレビを見る、友人や家族と過ごす」などの日常的な活動を、お金を使って変えることで、よい結果が得られます。幸せを味わうための時間を増やすためにできることを考えることが大切です。
■お金を使う前に自分に問いかけよう
デザイナーのグラハム・ヒル氏のTEDの講演を思い出すと、物を買うときは「本当に幸せになれるのか」自分に問いかけることが大切だと感じます。モノに囲まれても幸せにはなりません。
本書でもまずは自分自身に問いかけることを勧めています。
「このお金を使うことで最大の幸福を得られるのか?」
「これを買ったら時間の使い方がどのように変わるのか?」
「これがハッピーマネーなのか?」
これらの疑問に対して5つの原則を実践することで、幸せへの近道となります。いま使おうとしているそのお金がハッピーマネーになるか、幸せを経験する時間を増やすことができるかどうかは、自分の選択次第なのです。
目次
Prologue 「幸せをお金で買う」5つの法則 Five Principles to Buy Happiness
Lecture1 経験を買う Buy Experiences
Lecture2 ご褒美にする Make it a Treat
Lecture3 時間を買う Buy Time
Lecture4 先に支払って、後で消費する Pay Now, Consume Later
Lecture5 他人に投資する Invest in Others
Epilogue 視野を広げよう Zooming Out