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【書評】
座らない!
—成果を出し続ける人の健康習慣—

原題: EAT MOVE SLEEP
トム・ラス(著) 牧野洋(訳)

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著者について510mv5-nKHL._SX335_BO1,204,203,200_.jpg

前回に引き続き、今回ご紹介するのもMAPP第一期の卒業生によって書かれた本です。著者のトム・ラスは、ポジティブ心理学とも縁が深いギャラップ社に長年勤務するかたわら、「心のなかの幸福のバケツ」(米ニューヨーク・タイムズ紙ベストセラー番付1位)や「ストレングス・ファインダー2.0」(2013、2014年共に米アマゾン年間ベストセラー1位、日本語未訳)など数々の国際的ベストセラーを執筆してきました。祖父のドン・クリフトンはストレングス・ファインダーの開発者であり、「強みをベースにした新しい心理学の父、ポジティブ心理学の祖父」のような存在とも言われています。そんな祖父の影響を幼い頃から受けて育った、同期生の中でも圧倒的なサラブレッドのトムが、今回はどんな本を書いたのだろう?と私もワクワクしていました。

■ 「健康」と「ウェルビーイング」

今回のテーマは「健康」と「ウェルビーイング」。これまでの彼の著書を読んだことのある人にとっては、意外なテーマだったのかもしれません。しかし、本書の中でも明かしている彼自身の経験(10代でがんを宣告されて以来、健康とウェルビーイングに関するありとあらゆる学術研究関連の文献を読みあさり、彼自身が実践してきました)を踏まえると、とても自然な流れだったのかもしれません。

一見すると単なる健康本のようで、ポジティブ心理学との関連性は薄いように思われるかもしれませんが、実際に読んでみると、それが大きな間違いである事に気づかされます。原題の通り、「EAT MOVE SLEEP」(食、運動、睡眠)が健康のための重大要素であることは周知の事実ですが、著者は彼自身の経験と豊富な知識を元に新しい切り口でこれらの重要性について言及し、まさに「EAT MOVE SLEEPを制するもの、健康で幸せな人生を制する」ということを教えてくれています。

■ 今日から変えられる生活習慣
本書の影響を受けて、この本を読んでからというもの、私自身の生活習慣にもいくつか変化がありました。例えば、夜9時半以降は携帯やPCを見ない、10時就寝・5時起床のリズムを定着させる、二度寝をしない、寝室を冷やす、いちいち座らない、炭水化物の摂取を減らす、などです。意識も大きく変わりました。全て、更なる健康とウェルビーイングを謳歌するための投資です。皆さんも、本書を読めばきっと自然に自分の生活習慣を見直して行動を起こしたくなるに違いありません。

■ 健康経営

本書が「単なる健康本」と一線をかくしている最大の理由は、著者が提案している「健康経営」という新しい視点ではないでしょうか。トム・ラス氏は、職場の健康とウェルビーイングを促進するのは、経営者にとって最重要な仕事だと断言しています。なぜなら、経営者と社員の健康とウェルビーイングが最高水準に保たれていることが、組織繁栄の為に絶対的に必要だからです。また、健康とウェルビーイングへの投資には、直接的にも間接的にも大きなリターンがあると述べています。

健康は個人の責任というイメージが強い中で、「健康経営」という視点はとても革新的です。ましてや、「寝る間も惜しんで馬車馬のようにがむしゃらに働く」という働き方がまだまだ根強い日本においては革命的な発想かもしれません。社員の健康とウェルビーイングを軽んじる事がいかにナンセンスであり、個人にとっても組織全体にとっても死活問題であるという事を本書は教えてくれています。

「健康経営」を実践する上で最も大切なことは「ウェルビーイング文化」の構築だとして、そのための第一歩は、経営者やリーダーが率先して健康とウェルビーイングに投資することだと述べています。また、企業として「健康経営」を実践している一例として挙げられるのが、米グーグル本社にある「グーグルプレックス」。キャンパス内にスポーツジムやサイクリング場があり、「勤務時間中に」社員が汗を流し、リフレッシュする事を推奨しているそうです。

少し極端な例かもしれませんが、このような「健康経営」が世界の常識になる日もそう遠くないのでは・・・と秘かに思っています。


本書を読むまえに ——「健康経営」が企業を変える
はじめに
Chapter 01 三つの基本要素  
 カロリーよりも食事の質が大事
 「座り続けること」が最大の敵
 成果を出したかったらもっと寝る
Chapter 02 小さな選択が大きな変化を生む
  その一口で健康が決まる
  座るのは喫煙より体に悪い
  睡眠不足はあなたを別人にする
Chapter 03 毎回正しい選択をする
  炭水化物・タンパク質比率で選ぶ
  家の中の食べ物を配置換えする
  歩きながら仕事をしてみる
Chapter 04 良い習慣を築く
  砂糖は老化を促進する
  代替甘味料は解決策にならない
  心と体のため20分ごとに2分歩く
Chapter 05 自己免疫システムを強化する
  表面の色で食べ物を判断する
  風邪と睡眠の密接な関係
  睡眠では質が量を凌駕する
Chapter 06 生活習慣は遺伝子を上回る
  新しい遺伝子を身にまとう
  測定するだけで活動的になる
  毎日8キロ歩く
Chapter 07 もっと活力が出る生活をする
  パンやライスを避ける
  大皿料理で食べる量は10%増
  運動後も脂肪は燃え続ける
Chapter 08 タイミングが肝心
  空腹時は悪食になる
  早食いで肥満リスクは2倍
  運動後は12時間気分が良い
Chapter 09 応急措置
  最初の注文が「アンカー」になる
  体の両側を使う
  照明でメラトニンを調整する
Chapter 10 賢い選択
  タンパク質に優先順位を付ける
  友人にジャンクフードをおごらない
  短期的な目標を見いだす
Chapter 11 健康的に仕事する
  ウォーキングミーティングの効用  
  オフィス机での食事は危険
  睡眠不足は泥酔状態と同じ
Chapter 12 きっぱり断ち切る
  捨てたほうがいい食べ物
  友人のダイエットを手助けする
  二度寝にはメリットがない
Chapter 13 神話を打ち砕く
  パンよりはバターのほうが健康的
  加工肉とジャガイモをやめる
  寝室は冷やす
Chapter 14 健康は自宅から始まる
  お皿のサイズと色で痩せられる
  自宅を中心に新しい習慣を築く
  家族でしっかり眠る
Chapter 15 早めに手を打つ
  「おとり」に引っ掛からない
  運動中の楽しさを思い出す
  記憶するために眠る
Chapter 16 しゃきっとする
  高脂肪食は仕事の敵
  学んだ後の運動で記憶が定着
  規則的な運動は睡眠薬より効果的
Chapter 17 期待に沿う
  食欲を削ぐあだ名を付ける
  有機栽培は健康を意味しない
  目標を周りに公言する
Chapter 18 良い夜を過ごす
  朝は豪華に、夜は簡素に
  テレビ視聴は寿命を縮める
  就寝前の1時間を聖域にする
Chapter 19 物事をとらえ直す
  ドライフルーツは果物ではない
  商品名やパッケージにだまされない
  眠るときには雑音を流す
Chapter 20 日々のルーティンを調整する
  加熱法が食べ物の良しあしを決める
  長距離通勤は離婚への道
  サマータイムで寿命が縮む
Chapter 21 今を生きる
  「腐るスピード」で食材を判断する
  スマホ姿勢は体に負担
  ストレスは睡眠を台無しにする
Chapter 22 究極の老化防止法
  トマトで「食事焼け」しよう
  一歩ごとに若返る
  睡眠があなたの見た目を決める
Chapter 23 健康的に意思決定する
  健康的なものから食べる
  人間は実は「運動中毒」
  レム睡眠はストレスを軽減する
Chapter 24 自己責任
  お菓子は一握りにとどめる
  1日5分だけでも外に出る
  続けるために背中を押してもらう
Chapter 25 予防策
  減量でがんを撃退する
  必要なのは運動の処方箋
  二つの数字を暗記する
Chapter 26 道を切り開く
  お店で正しい食材を選ぶ
  運動で脳と腸をきれいにする
  一晩眠るだけで正しい判断ができる
Chapter 27 新しい習慣を身に付ける
  ケーキの代わりにベリーを食べる
  ご褒美はほどほどにして楽しむ
  毎日の行動の運動効果を知る
Chapter 28 新しいトレンドをつくる
  ブロッコリーは新しい流行
  コーヒー、お茶、水にこだわる
  ネクタイとハイヒールをやめる
Chapter 29 すべてはつながっている
  自分特有の健康リスクと闘う
  減量すれば安眠できる
  理想の睡眠は8時間
Chapter 30 まとめ
  ほんの一口を侮らない
  運動を習慣化する
  睡眠は未来への投資
おわりに
  行動を起こす——新アプリ「ウェルビー」
  著者あとがき
  訳者あとがき
  参考文献


2015年12月
神谷雪江(Masters of Applied Positive Psychology修了)

執筆者:神谷雪江(かみや ゆきえ)


米・ペンシルベニア大学大学院 応用ポジティブ心理学修士課程(MAPP)第一期生。修了後は、日本で人事コンサルティング会社に勤務し、ポジティブ心理学の、組織・人事への応用に従事。2009年より米・ボストンに移り、グローバル人材の採用や翻訳業に従事。 強み診断ツール「Realise2」の翻訳にも携わる。

神谷さんが執筆した『ペンシルベニア大学MAPP回想録』はこちらLinkIcon