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【書評】「勇気」の科学 
一歩踏み出すだめの集中講義



ロバート・ビスワス=ディーナー(著) 児島修(訳)




科学的に裏付けされた「勇気」の実用的方法が書かれた本




今回は、社会心理学博士ロバート・ビスワス=ディーナー氏の本を紹介します。
本書原題「The Courage Quotient: How Science Can Make You Braver」




ロバート博士は、昨年5月に来日し ポジティブサイコロジースクールにおいて 「強みの開発・応用」を講義されました。


またそのときに行われた「幸福度の研究」をテーマにした特別講演会では、世界各地におけるフィールドワークについて、「ポジティブ心理学界のインディ・ジョーンズ」の異名を持つ博士ならではの興味深いエピソードを伺うことができました。


本書でも、研究室におさまることのない博士の「勇気の実践」のエピソードが紹介されています。




■勇気ある人が周りにいない?
「日々の暮らしの中に勇気ある行為を見つけ出し、隠れたヒーローにスポットライトを当てることができたら…」
博士が友人他2万人近くの人に告知をしたところ、推薦があったのはたったの5件だけ。
友人たちは「本当に勇気のある人は、周りに誰もいない」と答えました。


博士は、勇気が何か、その価値や特性などを、人々がきちんと理解できていないのだと感じました。
本書を通して、私たちはその曖昧さを正し、さらに勇気指数を高める方法を学ぶことができます。




■勇気とは何か
博士は、「勇気とは、危険、不確実性、恐怖があるにもかかわらず、道義的で価値ある目的に向かっていく行動意志である」と定義し、勇気の要素として「恐怖のコントロール」と「行動意志」をあげています。


勇気は「一般的勇気」と「個人的勇気」の2つに分類されます。
一般的勇気は、人々に感銘を与えるような、劇的かつ大胆で、英雄的な行為のことです。
個人的勇気は、「個人的な恐怖に打ち勝つ」ことで、必ずしも他者のためである必要はなく、この「恐怖」は他者からみれば恐怖ではないこともあります。


私たちは、たとえ劇的ではなくても、自分の中の恐怖や不安を乗り越えた経験を持っています。
この個人的な領域の勇気は、習得し、高めることができます。




■極限状態における「勇気」とは
もう一つの「一般的勇気」は、どのような心理過程を経て行動意志が高められるのでしょうか。


悲劇的な大事件や大災害など、自らの命が危険にさらされるという極限状態において、日常ごく普通の生活を送っていた多くの人々が、勇敢な行動をとりました。


アメリカで起きた同時多発テロ事件で、ユナイテッド航空93便の乗客は、テロリストたちと闘うことを選択しました。
乗客同士が団結し、「集団行動」をすることで個人的な不安や恐怖を乗り越えたのです。




■「勇気」と「魔術的思考」
私たちの生活のなかで、身近に勇気を高めることができるものが「魔術的思考」です。
魔術的思考は、非科学的だと思いつつも誰もが持っているお守りや、おまじない、ジンクス、運を信じる、念じる…などといった類のものです。


博士は魔術的思考について、
「不安や恐怖への対処、勇気と自己効力感を高めることに直接的な関係がある」
「超自然的な力を信じることは、勇気を高める効果的な手段に成り得る」
と述べ、これらの効果の例を紹介しています。


ラッキーアイテムやおまじないなどは、ばかにできないものなのです。




■ロバート博士の「勇気」
博士は、本書で紹介されたさまざまなテクニックの効果を確認するために、自らそれを実践しました。
「高所恐怖症」であり「飛行機恐怖症」である博士にとって、勇気のいる行為の代名詞といえるものがスカイダイビングです。


恐怖を克服しようと行動することは決して笑いごとではありませんが、博士の体験談には、思わずにやりとしてしまうようなユーモアが込められています。




■「勇気」は習得可能
博士は、スカイダイビングをするために実践し経験した5つの教訓をあげています。


博士の「勇気の実践」は、私たちが何かに挑戦したいとき、さまざまな不安や恐怖にどう対処し、どう行動すればよいかを教えてくれます。


巻末付録に自己テストが用意され、「勇気指数」を測ることができます。
本書を読み始める前に、まずこのテストをすることがすすめられています。


本書を読んだ後、あるいは「勇気の実践」の後、私たちの勇気指数はどのように高まっているでしょうか。

目次



日本語版によせて
Introduction 一歩を踏み出すための科学
第1部 勇気とは何か
第1章 自分の勇気指数を知る
第2章 勇気を測定する
第2部 恐怖をコントロールする
第3章 感情のシーソーに乗る
第4章 魔術的な思考を活用する
第3部 行動意志を強化する
第5章 権威に抵抗する
第6章 傍観者にならない
第7章 あえて失敗する
第4部 勇気を実践する
第8章 実験室を出て、現実の世界へ


付録1 勇気指数テスト
付録2 自分の勇気のタイプを知る


謝辞
解説(清水ハン栄治)





2014 年1月4日
中川由美子( ポジティブ心理学コーチング課程修了)