【書評】Q・次の2つから生きたい人生を選びなさい
ハーバードの人生を変える授業Ⅱ
タル・ベン・シャハー(著) 成瀬まゆみ(訳)
幸福感の40%を決める「選択すること」について書かれた本
今回は、ポジティブ心理学「幸福」研究の第一人者のひとり、タル・ベン・シャハー氏の本を紹介します。本書原題「Choose the Life You Want」
■ハーバードの人生を変える授業
前著『ハーバードの人生を変える授業』(原題「Even Happier」)では、ポジティブ心理学のエッセンスを日常生活に取り入れるために、どのように考え、行動すればよいか、52のトピックについてThink&Actionを示しました。
シャハー氏は、「リフレクション:反映させ行動すること」を提唱しています。
本書でも行動する大切さを説いていますが、「どんな選択をするか」に焦点を当て、101のトピックそれぞれの冒頭で2つの選択肢を提示し、「選択できることに気づくこと」、そして「選択すること」の重要性を強調しています。
■幸福感の40%は「選択」で決まる
ポジティブ心理学の研究では幸福感を決めるのは、遺伝的要因が50%、環境的要因が10%、残り40%は自分自身の意図的行動によるものとされます。
つまり、「自分がどんな選択をするか」が、「自分の人生をどう感じるか」を決めるのです。
■「選択肢はある」
つらい出来事や行き詰った状況のもとでは、私たちは「選択肢などない」と思いがちですが、シャハー氏は、自動車王ヘンリ・フォードの「できると思えばできる。できないと思えばできない」という言葉をかり、「選択肢があると思えばある。ないと思えばない」と述べています。
あると信じれば選択肢は存在し、選択した行動を実践することで、自らの手で「現実をつくりだす」ことができます。
■マインドフルに生きることを選択する
マインドフルになることを説明するために、ヘレン・ケラーのエッセイ『目の見える3日間』が引用されています。
ある日ヘレン・ケラーは、森を散歩したという知人に、森の中はどうであったかをたずねたところ、その人は「別に何も」と答えました。
「明日、突然目が見えなくなってしまうかのように、すべてのものを見てください。明日、耳が聞こえなくなってしまうかのように……聞いてください。……五感を最大限に使ってください。世界があなたに与えてくれている喜びと美しさを讃えましょう」
ここで気づかされることは、マインドフルに生きることを忘れてしまうと、周りの人に対する思いやりも失われてしまうということです。
このエピソードは、101あるトピックの2番目に示されています。
「マインドフルに生きること」「思いやりを持つこと」は、後に続くたくさんの選択と行動の土台となる「選択」といえるでしょう。
■ポジティブ心理学を深めるための手引書
本書は、ポジティブ心理学の様々なエッセンスと実践を学ぶことができます。
また、トピックそれぞれについて参考文献が紹介されており、ポジティブ心理学の学習を深めるための手引書として活用することができます。
シャハー氏はこの本を、「何が正しいか『知る』ためではなく、正しいことを『する』ための本だ」と述べ、日々意識的な選択をすること、その選択に基づいた行動を実際に起こすことを私たちに促しています。
本を読み進め、「選択する」ことを学ぶうちに、幸福を求めることは主体的で自分自身が責任を負うものであること、「現実の自分」は自分が作るものであることを改めて感じるようになります。
これを恐れるか、楽しむかも、自分の「選択」次第なのです。
目次
はじめに
001選択して生きる
002人生のすばらしさを味わいつくす
003いったん落ち着いて考える
004戦略的に考え、行動する
005自信と誇りを表現する
006変化を起こす
007いまやる
008許す
009仕事を天職と考える
010困難に学ぶ
・
・
・
097「人間的であること」を自分に許す
098親切な行動をする
099耐える
100平凡のなかに非凡さを見出す
101夢を大切に扱う
訳者あとがき
参考文献
2013年10月24日
中川由美子(
ポジティブ心理学コーチング課程修了)
関連情報 タル・ベン・シャハー氏 著書の紹介
HAPPIER 幸福も成功も手にするシークレット・メソッド
このスクールHPでの「お薦めの本の紹介」では、海外でベストセラーになりつつも、日本ではそれほど話題になっていないと思われる本も積極的に紹介をしています。本書も良書でありながら、(出版社や翻訳者には失礼ですが)国内ではあまり読まれていない書籍かもしれません。
著者のタル・ベン・シャハー博士は、イスラエルで育ち、ハーバード大学で教育を受け、組織行動論で心理学の博士号を取得した心理学者です。現在は地元イスラエルに戻り、大学で教えながら世界各地で講演・研修に招かれています。
博士を有名にしたのは、何と言っても「ハーバード大学で当時一番人気だったポジティブ心理学を担当した」という事実です...
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